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産業用SSDの調達戦略

世界的な半導体不足が続いており、産業用SSDもリードタイムや価格に影響しています。産業用SSDを購入する立場である産業機器メーカーでは、産業用SSDを適切に調達するためにどの様な調達戦略を立案すれば良いでしょうか?産業用SSDの物理構造やサプライチェーンを理解し、外部環境の変化を考慮した戦略を立案できれば適切な対応に近づけることが出来ます。

サプライヤーの交渉力がアップしている

<図1>  産業用SSD業界での優位性変化 
(出所)品目ポートフォリオは日本総合研究所「戦略的ダイナミック調達管理」などを基にアドテックが加筆修正

まず、産業用SSDを購入する産業機器メーカーの立場で現状を分析します。世界的な半導体不足の影響で産業用SSDのリードタイムは以前より長くなり、価格も上がっています。この傾向はどのSSDメーカーでも同じため、購入側である産業機器メーカーは長いリードタイムや値上げを受け入れざるを得ない状況です。つまり、ポーターの5フォース分析で考えるとサプライヤーであるSSDメーカーの交渉力がアップしている状況です。

品目ポートフォリオで考えると、産業用SSDをはじめとした汎用電子部品はレバレッジ領域に属します。サプライヤーの優位性が高まると調達特性はレバレッジ領域からストラテジック領域に移ります。ストラテジック領域はカスタムデバイス等の製品が属している領域です。レバレッジ領域での調達戦略は、サプライヤー間で競争させたり全社で共通製品を購入することで割引価格を引き出したりするなどの戦略です。小さな努力で大きな効果が得られるのでレバレッジと呼ばれています。半導体不足の状況下ではこの戦略が通じず、ストラテジック領域の戦略、つまり、サプライヤーとの関係を重視する戦略が必要です。

半導体の調達がボトルネック

<図2>  SSDの構造とサプライチェーン

次に、産業用SSDメーカーの立場で現状を分析します。SSDは主にNANDフラッシュ、DRAM、コントローラで構成されています。そのため、サプライチェーンを考えるとSSDの供給性はそれら半導体の供給性に大きく依存します。SSDメーカーによってはそれら半導体の在庫を確保している場合もありますが、世界的な半導体不足の中、その在庫が潤沢とは期待できません。

SSDのサプライチェーンでは、半導体の調達がボトルネックになります。特にNANDフラッシュのサプライヤーは世界でも極めて限られています。コントローラはSSDメーカーが設計、製造するケースもありますが、企業数は限定的です。一方、産業用SSDは民生用SSDと違って安定した特性の製品を継続的に販売するために使用部品を変えない「部品固定(BOM固定)」を行うケースが多いです。そのため、このボトルネックの状況は民生用SSDより厳しい場合があります。

シナリオ分析から戦略立案へ

<図3> シナリオ分析により戦略を立案

以上を踏まえて調達戦略を立案することになりますが、サプライチェーン上のボトルネックである半導体の供給は不透明感があります。そのため、戦略策定の際は複数のシナリオを考慮したシナリオプランニングが有効です。つまり、時間軸での調達性の変化について複数のシナリオを考えるのです。

図3に時間軸での調達性のイメージを記載しました。調達性の深刻度の深さや調達性が悪い期間を複数想定してシナリオを考えますが、実際には米中摩擦といった地政学上のリスクや災害等による想定外のサプライチェーンの混乱リスクもあり、図3の様なシンプルな状況にはなりません。更に、半導体メーカー、部品メーカーは上記リスクを避けるために生産拠点の方針を従来の「選択と集中」から「分散」へ変更しつつあります。それによりコスト増となるため、購入側にとっては価格上昇のリスクも懸念されます。戦略を策定する際は、機能戦略、事業戦略、全社戦略といった戦略レベル別に検討します。

サプライヤーとの関係強化が重要に

<図4> 打ち手に落とし込む

機能戦略のレベルでは、例えばサプライヤーに対する購入保証が考えられます。購入を保証すると将来の需要が落ち込んだ場合のリスクを抱えるため、サプライヤーと交渉するのは調達部門・購買部門であっても社内の理解が欠かせません。事業戦略レベルでは、サプライヤーとの業務提携や共同開発を行うなど、サプライヤーを巻き込んでの踏み込んだ対応を行います。状況によっては、自社に有利な供給となるようサプライヤーに資本参加するなど全社戦略として経営レベルでの対応を行う方法も選択肢に入ります。いずれの戦略でも、半導体や電子部品が供給不足の状況では、戦略立案にあたりサプライヤーとの関係が非常に重要になります。

製品情報

アドテックは長年に渡り、コントローラメーカーと日常的に連携すると共に、定期的なトップ交流を継続しています。また、産業用SSDのサプライヤーとして、お陰様で納期対応やサポートが充実しているとのお言葉を頂いております。ご質問やご相談などがございましたらサポートセンターまでお気軽にお問合せください。

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